漆恋を解く僕たちは。
帰りは歩いて丘へ戻った。


帰る途中で何度も何度も空を見上げた。


もう何が悲しいのかもわからない・ ・ ・



ただ心に浮かぶのは〝 悠也さん〟に重ねて見ていた雅也さんのことばかり。



雨が降ってこんな悲しい気持ちも洗い流してくれたらいいのに…






丘についてから、結局そのあと雨が降ることはなくて空にはいつの間にか真っ白に光る三日月が昇っている。



綺麗な月を見ると、いつだって雅也さんと過ごした日々を思い出せる。


目を閉じればいつだって懐かしい景色が目の前に見える


゛雅也さん…゛




「────・ ・ ・紗夜・ ・ ・」



心の中で呼びかけると、大好きだった声が聞こえた気がした



これはどっちの声だろう…?



「────・ ・ ・お嬢様・ ・ ・」

゛あぁ、雅也さんの声・ ・ ・。

・ ・ ・雅也さんに会いたい・ ・ ・。゛





私はそのまま、声に引っ張られるみたいにして楽しかった日々の夢の中へ落ちていった。
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