漆恋を解く僕たちは。
起こさないように彼のほほに触れていた手をそっと離して立ち上がろうとすると────


ギュッ・ ・ ・


まだ目を閉じたままの雅也さんに手を掴まれていた。




「雅也さん…?起きてるの…?」


゛聞かれた……?

だめ・ ・ ・お願い、今起きたんだって言って…゛




頭の中がグチャグチャでただ彼に手を握られたまま俯いていると、低くて優しい、大好きな声が聞こえた。




「Ich möchte die Zeit anhalten. Ich werde dich in meinen Armen einschließen und dich umarmen….


(時間が止まってしまえばいい。そうなれば貴方を腕の中に閉じ囲めて強く抱きしめることが出来るのに…)」



目を閉じたまま呟かれた流暢なドイツ語は混乱している私には聞き取れなくて。


ただ彼が愛の言葉を紡いでいることだけが伝わってきた。
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