漆恋を解く僕たちは。
・ ・ ・
「俺は…怖いんです。
時間は俺たちの意志とは関係なく進んで行く。
お嬢様はいつか旦那様のお決めになった方と結ばれて、この家を守らなくてはならない方だ。」
一人の男性として雅也さんが紡ぐ言葉は切なくて苦しくて・ ・ ・、それでも耳が話せなかった。
「俺はいつかあなたの手を離さなくてはいけない。
あなたのそばであなたを守る役目が、いつか他の人のものになる日が来るんです。
俺は…一度あなたを手に入れてしまったら…もうあなたを手放して祝福することなんてできない。
きっと引き止めてあなたを苦しめてしまう…。だから…」
やめて・ ・ ・──。
その先はもういわないで…。
・ ・ ・。
『今日のことは全て無かったことにして下さい…』
ダメ・ ・ ・、そんな悲しそうに笑わないで・ ・ ・。
ついさっきまで触れ合えたはずなのに、どんなに手を伸ばしても雅也さんには届かない。
白い霞が出てきて周りがどんどん見えなくなっていく。
゛あぁ、夢が覚めるんだわ・ ・ 。
せめて夢の中ででも、「離れないで」って、「あなたと恋をしたいの」って伝えたい…゛
「雅也さん・ ・ ・!私…、雅也さんと・ ・ ・!」
言い終わるより先に周りには何も見えなくなって、だんだん体に力が入らなくなった。