影と闇
いやいや、そんな偶然あるわけない。


コンビニに寄って急ごうとしたときに会ったのが同じ２年生だという可能性は低い。


彼も私服姿だけど、地元の人で友達と一緒に来たとも考えられる。


でも、そうだとすると引っかかることがひとつだけある。


話しかけてきたとき、この人は私に対してタメ口だった。


私のことを知っているのか、もしくは私を自分と同い年だと判断したのか。


考えれば考えるほど疑問は増えてくばかりで答えが出てこない。


本当に誰なの？


心の中で質問を口にした数十秒後、彼が表情を変えた。


「もう、片桐さんってば察しが悪いね。俺、これでも人気あるほうだって言われるんだけど」


クスッと彼が笑った瞬間、頭の中でパシッとはじけた。


信じられないけど、まさか……。


「えっ、もしかして沖田くん⁉︎」


「当たり。隣のクラスの沖田だよ」


そのまさかだった。


私に気づいて駆け寄ってきたのは、なんと女子の間で人気だという沖田くんだった。


信じられない。


だって沖田くんのようなカッコいい男子が、私のような地味な子に嫌悪感を示すことなく笑顔で話しかけているから。
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