影と闇
あまり好きではない天気なら時間はゆっくり流れるのに、こんなにカッコいい男子に手をつながれて走っているせいか、私の中の時間が早く流れるように感じた。


引っ張られてからわずか数分で、集合場所にたどり着いてしまった。


集合場所には私たち以外の2年生全員がそろっていて、近くの建物で雨やどりしたり傘をさしながら話している。


それを見て息を大きく吐いた直後、私と沖田くんの周りに男子たちが集まってきた。


「よー、光磨(こうま)。集合時間ギリギリになって女と手をつなぎながら来るなんて羨ましいぜ」


「お前だけズルいぞ!」


「よっ、カップル!」


カップルって。


手をつながれているからって、べつに付き合ってるわけじゃないし。


嫌な感じはしないからなにも言わないけど。


だけど女子からの視線が痛くて、背中に変な汗が流れる。


私みたいな子が沖田くんと付き合っているわけでもないのに手をつないでいるなんて光景、ファンの子は絶対見たくないもんね。


チラッと沖田くんのほうに目を向けるが、彼はとくに驚きを見せなかった。


それどころかむしろ嬉しそう。


気のせいだよね?


周りを囲う男子たちに嬉しそうな表情を見せるなんて、幻覚だよね?


ありえないよ。
< 116 / 376 >

この作品をシェア

pagetop