影と闇
蘭子と理子ちゃんが私のところに来てくれたのは、正直ありがたかった。


遠くに離れていても存在は見えるのでいつかはバレるのではないかとヒヤヒヤしていた。


蘭子が私の右に、理子ちゃんが左に来てくれたので私は影になって隠れて見えなくなるはず。


私が内心ほっとしていることに気づかず、蘭子は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「茅乃が無事に帰ってきて本当によかった! こんな大雨の中で帰ってこられたのはマジ奇跡だよ!」


大袈裟だな。


大雨になって行方不明になることはありえないはずなのに、奇跡だと思うなんて。


でも、蘭子を安心させたなら文句はない。


痛いくらいに私の頭を撫でる蘭子は、まるで子供を大事にする母親のようだ。


安心していたのは理子ちゃんも同じだったらしい。


「本当だよ。もし茅乃がコンビニで別れたきり姿を消したってことになったら大変な目に遭ってるってことだもん。先生たちも心配するけど、私が一番心配するんだからね」


首を上下に動かしてうなずく理子ちゃん。


理子ちゃんも心配していたのだろう。


よく見たら目尻に涙のあとがついている。


「って、心配してたのは私も同じじゃないの! 阪口だけじゃないでしょ!」


理子ちゃんの肩をバシッと叩きながらツッコミを入れる蘭子。
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