影と闇
ここが今夜私が泊まる部屋か。


無意識にあたりを見まわしながら鍵穴に鍵を差し込む。


今いるフロアに誰かがいれば、間違いなく私は不審者に見えるだろう。


誰もいないことにほっとしつつ、鍵の施錠を解く。


それと同時にガチャッとドアを開けて近くのスイッチを押すと、部屋の電気がパッとついた。


奥まで続く明るい電気が、まるで地味な私の姿をまぶしいくらいに照らしている感じだ。


少し顔をしかめてドアを閉める。


数歩歩いたところで、ドレッサーの前に置かれた椅子の下に自分の荷物を置いた。


ひと息吐いたとき、ふと窓から見える景色に目を奪われる。


きれいだな。


こんなにきれいな夜景を見るのは、たぶんはじめてだ。


数年前にも夜景を見てテンションを上げていたけど、これほどまでに美しい夜景は見たことがない。


気がつけば私は、窓のほうに歩み寄って外の景色を眺めていた。


たった数時間前は雷が鳴りそうなくらいに雨が降ってたのに、その雨が嘘のようだ。


私と夜景は似ている。


でも、あきらかに違う点がある。


夜景は暗くても星や月などを飾っているからきれいに見えるけど、私はなにも飾っていないから地味に見える。


性格は暗いままでも、少し着飾ったほうが周りからいい感じに見えるのかな。
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