影と闇
「だったら私、明日からイメチェンしてみようかな、なーんて……」


我ながら失敗したと思った。


だって、そう言ったあとに見た蘭子の表情がびっくりしたものになっているから。


なにを考えてんの、あんたは。


急にそんなこと言いだすなんて、バカじゃないの。


あんたがイメチェン? 無理に決まってる。


びっくりした蘭子の表情からそんな声が聞こえてきそうで、雑誌をローテーブルに置いて思わず耳を両手でふさいだ。


言わなきゃよかったかもしれない。


蘭子にまたイライラさせるようなことを、私はしてしまったのかもしれない。


体をぷるぷると震わせてギュッと目をつぶるが、しばらくたっても蘭子の裏の声が聞こえてこない。


耳をふさいでいるせいもあるけど、今の私の言葉に対する反応がまったく聞こえない。


おそるおそる両手を耳から離し、目を開けた直後、蘭子が目をキラキラと輝かせた。


「マジ⁉︎ 茅乃、イメチェンする決心を固めたんだ! うん、明日のグループ行動で土産を買うついでに新しい服でも買っちゃおう!」


えっ、冗談で言ったのに。


私の肩に手を置いて思いっきり体をゆさぶる蘭子の表情を見ると、さっきの表情がまるで嘘のように笑顔だ。


しかも私よりもノリノリだ。


自分がイメチェンするわけじゃないのに、どんなふうになろうかと考えてるみたい。


「あの、今のは……」


「明日は服とかアクセ買うだけにしておいたほうがいいかなー。いきなりイメチェンしたらみんなびっくりするからなー」
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