影と闇
さっき私が言った言葉は冗談だよ、と言おうとしたが、蘭子には聞こえていないのか私をスルーしてひとりごとをつぶやいている。


言わなきゃよかったかもしれないな。


たとえ冗談のつもりでも、このことを蘭子に伝えるべきではなかったな。


変身願望がないわけではない。


クラスでは確実に浮いているし、周りからは地味子だと見られるし。


それに、末那の引き立て役になりつつあるし。


だからといって末那が嫌いというわけではない。


親友だからこそ、私の気持ちを理解してほしい。


ちょっとずうずうしいかもしれないが、心の底から思ってる気持ちだけはせめてわかってほしい。


だけど今からではダメだ。


みんなの混乱をさらに招くことになって、修学旅行どころじゃなくなるから。


自分の行動が学校のイベントのさまたげになるのはできるだけ避けたい。


イメチェンするのは、修学旅行が終わってからにしたほうがいい。


心の中でぶつぶつとそうつぶやいていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。


それに返事をしたのは私ではなく蘭子だった。


周りに音符が出ていそうなハイテンションでドアを開ける蘭子を呆然とした様子で見つめる。


蘭子がドアを開けた直後、正面に立っていたのは理子ちゃんだった。
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