影と闇
理子ちゃんは私の表情を見ることなく蘭子にこう伝えた。


「2年生全員【Special room】っていうとこに集まれって。夕ご飯を食べるとこだと思うんだけど、行こっ」


まるで語尾に音符がつきそうな明るい口調でしゃべる理子ちゃん。


ちなみに【Special room】というのは2階にある、パーティーやイベントなどでよく使われる部屋のことだ。


単純なネーミングだと思うけど、そこを私が今さらツッコんでも仕方ない。


開いていた雑誌をゆっくりと閉じ、スッと立ち上がって蘭子と理子ちゃんのもとに駆け寄る。


私が外に出たと同時に、蘭子が鍵を持ってロックをかけた。


「よし、じゃあ3人で行こっか」


蘭子の表情がいつにも増して上機嫌なのは、さっき私が言った冗談のせい?


それとも私の目が疲れているだけなのか。


よくわからないが、3人で2階に向かう。


エレベーター前に着いてエレベーターがこの階に来るのを待ってると、うしろから何人かの声が聞こえてきた。


おそるおそるといった様子で振り向いた先にいたのは、隣のクラスのグループだった。


なぜ私が隣のクラスのグループだとすぐにわかったのかというと、そのグループの中にさっき見た人物の姿があったからだ。


はっと目を見開いてパッと目をそらす。


一瞬だけ彼のさみしそうな表情が見えたが、自分の目が疲れていると思って、そのことはあまり意識しなかった。
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