影と闇
こんな地味な私を監視する人なんて、いるわけないよね。


こくんとうなずいた直後、乗っていたエレベーターが止まり、扉がゆっくりと開かれた。


それは2階に着いたことを意味している。


逃げるようにエレベーターから降り、先に【Special room】と書いてあるドアを開けて中に入った。


私が入ってすぐに蘭子たちが慌てるように中に入ってきたが、ドアを開ける音や呼吸を整える蘭子たちの声は私には届かなかった。


なぜなら、私より先にここに来ていた末那が怖い目で見ていたから。


ぶるっと体が震える。


足がガクガクと悲鳴をあげている。


逃げたい衝動に駆られるけど、2年生全員が集まる場所からいきなり逃亡したら騒ぎになってまた蘭子と理子ちゃんが心配するかもしれないと思い、なんとかとどまった。


末那と視線を合わせたときから顔が青ざめてたのか、いつの間にか隣に来た蘭子が目を見開いた。


「どうした茅乃、もしかして体調悪いの?」


顔色が悪かっただけでなく体をぷるぷると震わせたので、蘭子は雨で冷えたと推測したのだろう。


違う、私が体を震わせているのは体調が悪いせいじゃないの。


本当はこちらを怖い目で見つめる末那に恐怖心を抱いているから。
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