影と闇
末那の影のある笑顔に少し顔を強張らせた先生だが、それ以上に表情を崩すことはせずキープした。


必死に表情をキープしているだろうけど、額に大粒の汗が浮かんで流れるのを私は見逃さなかった。


どう見ても焦っている。


焦っているのではないかと問いかけたくなったが、末那の笑顔があまりにも怖くて、とても聞けるような状況じゃなかった。


ここはどうするべきか。


視線を落として考えていると、突然誰かがこちらに駆け寄ってきた。


「先生、どうしたんですか?」


そんな声が聞こえた瞬間、蘭子たち女子が黄色い悲鳴をあげた。


ただ、それと同時に末那が悔しそうな顔で私の手を離した。


そして避難するように奥に逃げていく。


なんでそんなことをする必要があったのかわからないが、今はそのことを考えている場合ではない。


声のしたほうにゆっくり視線を向ける。


そこにいたのは、数時間前に集合場所へ向かう途中で会った人物だった。


「沖田くん……⁉︎」


そう、沖田くんだった。


なんで関係ないはずの沖田くんがこっちにやってくるの⁉︎


頭がさらに混乱する。


目をしばたたかせる私を尻目に、蘭子と理子ちゃんが沖田くんに満面の笑みを見せた。
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