影と闇
なにも言わない私も驚いている。
驚きを隠せない私たちを尻目に、沖田くんは私の手を取って歩きだした。
「先生、本当に片桐さんが体調悪そうなので、部屋まで連れていきますね」
礼儀よく先生に頭をさげ、ここにいる全員が騒ぐのもおかまいなしにスタスタと歩いていく。
瞬間、女子たちの悲鳴が耳に響いたが、女子たちの反応に対応なんてできない。
遠慮なく私の手を握って、周囲の目を気にすることなく出ていく沖田くんを、なんとか止めなければ。
通路をしばらく歩き、エレベーターが視界から現れたところで手を離した。
それと同時に沖田くんがきょとんとした顔でこちらを見た。
なにか言わないと。
「沖田くん、私、体調悪くないよ。熱もないしだるくないし。それに体が冷えたっていうのは……」
そこまで言ったところで目を泳がせた。
『それに体が冷えたっていうのは嘘で、本当は末那が私に見せた笑顔が怖いのを隠して言ったの』
やだ、なにを言おうとしてるの、私。
そんなことを沖田くんに伝えたいんじゃない。
本当は……。
「え、えっと……その……」
ダメだ、言えない。
どうして本当のことを沖田くんに言えないの。
驚きを隠せない私たちを尻目に、沖田くんは私の手を取って歩きだした。
「先生、本当に片桐さんが体調悪そうなので、部屋まで連れていきますね」
礼儀よく先生に頭をさげ、ここにいる全員が騒ぐのもおかまいなしにスタスタと歩いていく。
瞬間、女子たちの悲鳴が耳に響いたが、女子たちの反応に対応なんてできない。
遠慮なく私の手を握って、周囲の目を気にすることなく出ていく沖田くんを、なんとか止めなければ。
通路をしばらく歩き、エレベーターが視界から現れたところで手を離した。
それと同時に沖田くんがきょとんとした顔でこちらを見た。
なにか言わないと。
「沖田くん、私、体調悪くないよ。熱もないしだるくないし。それに体が冷えたっていうのは……」
そこまで言ったところで目を泳がせた。
『それに体が冷えたっていうのは嘘で、本当は末那が私に見せた笑顔が怖いのを隠して言ったの』
やだ、なにを言おうとしてるの、私。
そんなことを沖田くんに伝えたいんじゃない。
本当は……。
「え、えっと……その……」
ダメだ、言えない。
どうして本当のことを沖田くんに言えないの。