影と闇
「へっ、ちょっと沖田くん⁉︎」


至近距離に沖田くんの胸板らしきものが見えて、言葉をしぼりだすだけで精いっぱい。


今まで女友達に囲まれていて男の人に免疫がない私がドキドキしないわけがない。


でも、沖田くんは距離を縮めてくる。


心臓がバクバクといって、いつの間にか頬に帯びた熱が熱くなる。


どうしよう。


こんなに距離を縮めて、いったいなにがしたいの？


「やっ……ちょっ、離れて！ 私ひとりだけでも大丈夫だから……！」


そう言いながら体を力いっぱい押し返しても彼の体が離れることはなく、どんどん距離を縮めている。


本当にどうすればいいの？


こういうことを体験したことがないから、どう対処すればいいかわからない。


ぐるぐると思考をめぐらせたとき、沖田くんの声が聞こえた。


「……もう、無理……」


無理って言われても。


そんなこと言われたも、どういう対応をすればいいかわからないよ。


落ち着きを取り戻すことができなくてさらに慌ててしまう。


次の言葉を出そうとした直後、肩になにか重いものがのしかかった感触に襲われた。


なに、いったい。


肩にのしかかった重いものの正体を探しだすが、すぐにわかった。
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