影と闇
私の肩にのしかかってきたもの。


それは沖田くんの体だった。


なんらかの理由で力がなくなった沖田くんの体が、私のほうに倒れ込んできたのだ。


「……え、えぇっ⁉︎」


肩に重みを感じたあと、思わずマヌケな声を出してしまう。


だって、沖田くんが私のほうに倒れ込んだんだよ?


びっくりしないわけがない。


「どうしよう……」


今ここには私と沖田くん以外誰もいない。


倒れてしまった沖田くんから部屋番号を教えてもらうことができない。


だとすれば、こんな状況に対応すべき方法はひとつしかない。


沖田くんを部屋の中まで運んで、寝かせてあげることだ。


男子を運ぶことができるかどうかと迷っている場合じゃない。


とにかく部屋の中に入れよう。


沖田くんの腕を自分の肩にまわしてドアを閉め、重い足取りでベッドのほうまで歩く。


手前側のベッドの布団をめくり、ベッドに沖田くんの体を沈ませる。


彼の体が完全にベッドの中に入ったのを確認して布団をもとに戻してひと息ついた。


なんとか運べた。


いつの間にか額に浮かんでいた大粒の汗をぬぐい、奥のほうのベッドに座り込む。


と、ここで気づいた。


修学旅行に行くときに必ず持っていくものがあったことに気がついた。
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