影と闇
もし自分や誰かが風邪をひいたときのために冷却シートを何枚か持ってきたんだっけ。


今まではそんなことはなかったから役に立たなかったけど、役立つときが来るなんて。


持ってきたバッグから冷却シートを取りだし、そのうちの一枚を開けて沖田くんの額に貼る。


そのときにサラサラな髪が手に触れてドキッとするが、気づかないフリをする。


「よし、これで大丈夫かな……」


冷却シートを貼るときに出たゴミをゴミ箱に捨てたそのとき、ポケットに入れていたスマホが震えた。


慌てて取りだすと【メッセージが一件届きました】という文字が画面に表示された。


なんだろう。


こんなときにメールなんてめずらしい。


そもそも私はメールを送ったりもらったりという経験があまりない。


だからちょっとびっくりしている。


おそるおそるメッセージを表示させる。


【なにが大丈夫なの?】


「ひっ……!」


思わず悲鳴をあげてしまった。


知らない人から届いた、奇妙なメッセージ。


なぜそのメッセージが奇妙だと思ったのかというと、その言葉が私がつぶやいた言葉に対する質問そのものだったから。


まるで誰かに見られているかのような感じがする。
< 143 / 376 >

この作品をシェア

pagetop