影と闇
しかし、なかなか乾かないな。


小さいころからずっと伸ばしているせいか、髪が全然乾かない。


今度美容院に行って、髪の量を少なくしてもらおうかな。


ショートヘアにするのは無理な気がする。


もともと顔に自信がないし、ショートヘアは似合わないし。


嫌いではないけど、髪を短くしたいかと聞かれたらしたくない。


誰になんと言われようが絶対に切りたくない。


そんなことを考えているうちにだんだん髪が乾いてきたので、ドライヤーのスイッチを切った。


鏡越しの自分に変顔に近い笑顔を見せたあと、ドライヤーをもとの場所に戻してお風呂場を出た。


昨日着た服とタオルを【洗濯すべきもの】と書かれたテープが貼られた袋の中に入れる。


それと同時にふとベッドのほうに目をやると、お風呂に入る前にはいたはずの沖田くんが消えていた。


もしかしたら私がお風呂に入っている間にこっそり部屋を出たのだろう。


ここにいないということは間違いなく部屋から出ていったということになるのだ。


少し名残惜しさを感じながら再び服を袋につめる。


「あれ?」


パッと視線をはずしたときに、スタンドが置いてある机になにか白いものがあった気がして、勢いよく振り向く。
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