影と闇
ふたりには申しわけないけど、私がほしいアイテムがここにはないみたい。


逃げるように店の入口に向かった直後「茅乃!」と声をかけられた。


振り向くと、蘭子が数着の服とアクセサリーを片手で抱えながら大きく手を振って、こっちに来てとアピールしているのが見えた。


ハイテンションの蘭子を不機嫌にさせることはできるだけ避けたかったので、視界に蘭子の姿が映ってすぐに蘭子のもとまで駆け寄る。


「早いね、蘭子」


「へへ。茅乃に似合うアイテムを探すとなれば、これくらい朝飯前よ。本気で探したんだから」


なんか自信たっぷり。


よほど自分のチョイスに満足しているのだろう。


「じゃあ、さっそくこれ全部試着してみて」


今から⁉︎


しかも全部……⁉︎


「そ、そんな……」


無理だよ、と答えようとしたが、こちらにやってきた理子ちゃんに言葉をさえぎられた。


「見つかったよー、茅乃に似合うの」


駆け寄ってきた理子ちゃんの手の中にあるものを見て、ギョッと目を見開く。


蘭子が持ってきた服とはまったく違う服を数着、帽子と靴が3つずつ。


「こんなに……⁉︎」


「阪口、あんたどれだけ見つけたの? 私より多くない?」


「予算のことも考えたけど、やっぱ無理だわ。茅乃に似合うアイテムばっかりで」
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