影と闇
さっき見たときはお金のことを慎重に考えていたのに。


異常なほど真剣になるふたりもすごいけど、一番すごいのはふたりが私のところに持ってきたアイテムの数だ。


自分の部屋のクローゼットにしまってある服の数よりも多い気がする。


予想以上の多さに、開いた口がふさがらない。


「うーん。どうしよう、会計……」


持ってきたものを全部買うという前提で、もう会計のことを考えている理子ちゃん。


さすがに無理でしょ。


こんな数の服を試着できたとしても時間に間に合わなくなるし、全部レジに持っていったとしてもとんでもない金額になるのは目に見えている。


もうあきらめたら?


そう言おうとしたが、私の口が動くよりも先に蘭子が口を開けた。


「こんなに持ってきたならここでのファッションショーはやめよ。時間かかるし。これらは私が払う。今回のためにアルバイトしたり貯金したから、けっこうお金たまってんだよね」


ファッションショー?


それって試着かな。


試着をやめようと提案したのは正直ありがたい。


しかし、ほっとしたのもつかの間、蘭子が会計についてとんでもないことを言いだしたのでさらに目を大きく見開いた。


「全部払うの⁉︎ 蘭子が⁉︎」


「うん」


「い、いいの?」
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