影と闇
「えっ? うん、いいに決まってるよ」


私の問いにあっさりと答える蘭子。


その反応もびっくりするくらい早かった。


蘭子が、理子ちゃんが持ってきたぶんのアイテムまで持ち、レジへ直行する。


蘭子を止めたかったが、あまりにも呆然としていたため、蘭子がレジの前に着くまでに止めることができなかった。


たくさんの服を、私のために買うなんて。


いつもの蘭子なら『そんなに金あるなら、私のぶんまで買ってきてよ』と決して自分からお金を出そうとはしないのに。


大きく開けた口が両手を使ってもふさがらず、結局蘭子が会計を終えるまでおさえられなかった。


あっという間に会計を済ませた蘭子は、大きな紙袋を手にさげてこちらに歩み寄る。


「お待たせ。ほら茅乃、これ全部茅乃のものだからね! 受け取って!」


「うん……」


止めるのをすっかりあきらめた私は、そう言うことしかできない。


こんなに大きな袋なら、袋に入っているアイテムの金額の合計は高かったのではないだろうか。


1万円は超えているだろう。


蘭子にお礼を言わないと。


「ありがとう、蘭子と理子ちゃん。私のためにこんなに選んでくれて」


「いいって。全部茅乃のためなんだから。お礼なんていらないよ」


「もー、鹿目さんってば無理しなくていいのに」


友達と笑顔を交わしながらの会話は、ミカに会ったとき以来かな。


やっぱり友達は持つべきものだね。


心の中でそうつぶやきながら、ふたりと一緒に笑い続けた。
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