影と闇
なんということでしょう。


今朝見た手紙のとおりの展開になってしまったではないですか。


グループ行動でバッタリ会うなんてことは二度とないと思っていたのに、バッタリ会うなんて。


これって、もしかして……。


「待ってたの?」


「ん?」


「私のこと……待っててくれたの?」


うわ。恥ずかしい、私。


女子に人気の沖田くんが地味な私を待っているなんて、そんなことあるわけがないじゃん。


期待するな。


期待するほど悪い結果になるのは目に見えているんだ。


目をつぶって沖田くんから視線をはずした。


だが、いつまで待っても彼の次の言葉が出てくる気配がなくて、固く閉じた目を開ける。


悲しそうな表情の彼がすぐに映った。


「待ってちゃダメだった?」


あぁ。もう、子犬のようなうるうるした瞳で私を見ないで。


本気で好きになっちゃいそうだよ。


勘違いしてしまいそうになっちゃうよ。


付き合っている子がいない沖田くんが、私のことを好きなわけがないのに。


そんなこと、100%ありえない。


「そんなことは言ってないよ……」


やめてよ沖田くん。


悲しそうな目で見つめられたら、ダメって言えなくなるよ。


これ以上私を言葉や表情で惑わさないで。
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