影と闇
「ありがとね、沖田くん。じゃあまたね!」


「あっ、片桐さん……!」


引き止めようとする沖田くんをスルーして、紙袋を奪い取り、蘭子と理子ちゃんのもとへ歩く。



ふたりの姿を見つけて、慌てて駆け寄る。


「ふたりとも行くの早すぎだよ……」


「間に合わないと思ったもん。てか、私と阪口がここに来たときにはほとんど集まってたけどね」


「うん。かなり早く来たかなって思ったけど、計算違いだったみたいだね」


足がガクガク震える。


たくさん紙袋を持っているせいもあると思うけど、一番は沖田くんだよ。


昨日のおわびとお礼をさせてほしいと手紙に書いて、本当にしてもらうとは思ってなかった。


と、ここで蘭子がなにかを思いついた顔をした。


「間に合わないって言われたら茅乃、そんなにたくさんの紙袋を持ってよく間に合ったね。間に合わないかと思ったよ」


その言葉で体を震わせる。


バレたかもしれない。


たくさんの紙袋を持ちながらダッシュして間に合うわけがない。


誰かに荷物を持ってもらったんじゃないかと思われるかも。


「いや、それは……」
< 171 / 376 >

この作品をシェア

pagetop