影と闇
もしかして、たまっていた不満を窓ガラスにぶつけているの⁉︎


心の中にたまった不満を漏らすことが悪いわけではないけど、その不満を窓ガラスに思いっきりぶつけるのはよくないよ。


と、ここで気づいた。


拾った破片に付着したのがなにかわかった。


このガラスの破片に付着しているのは末那の血だ。


においが金属っぽいのも、赤いものの正体が血だったら納得できる。


血だという証拠はそれだけではない。


窓ガラスを叩き割る末那の拳に、破片についた血がベトベトついていた。


血のにおいがしてめまいを覚えたところで、うしろから人の気配を感じた。


びくっと体を震わせながら振り返ると、そこにはなぜかスマホを手に持つ蘭子が立っていた。


「蘭子……⁉︎」


「しー。声出したら、今録画してる動画に声が漏れて台なしになっちゃう」


小声でそう言い、人さし指を口の前に当てて私に注意する蘭子。


どうやらスマホで動画を撮影しているようだ。


なぜ動画を撮っているのかわからないけど、とりあえず口を閉じることにする。
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