影と闇
「ねぇ、蘭子」


「ん? なに?」


「さっきから人の気配を感じるんだけど。しかも、すごいオーラを感じるし」


「え? 誰もいないでしょ」


まったく怯えもせず、躊躇なく気配を感じたほうに顔を向ける蘭子。


しかし、うしろを向いた瞬間、蘭子の表情がとても恐ろしいものになった。


やっぱり、と心の中でつぶやく。


うしろからのオーラに気づかなかったから、恐ろしく感じて当然だよね。


ていうか蘭子、なんで今までうしろからのオーラに気づかなかったんだろう。


首をかしげた直後、蘭子が怯えた顔で私のうしろに隠れた。


「ひ……! 怖いよ、校長先生……」


青ざめた顔を私のうしろから出すことなく、小刻みに体を震わせる蘭子。


うしろにいたのは校長先生だった。


なんで校長先生がここに?


驚きに支配された私に、校長先生がわざとらしいくらいニッコリと微笑んだ。


「片桐さんに鹿目さん、いったいこれはどういうことかな?」


ひっ! こ、怖い!


校長先生はいつもニコニコ笑っているから怖いイメージはないけど、今の笑顔は怖い。
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