影と闇
だって、蘭子がそんなことを言うとは思わなかったから。


修学旅行では楽しそうに会話していたのに。


驚きで言葉を出せない私に蘭子がチラッと視線を向ける。


そして、私たちを包んでいたピリピリとした空気を壊した。


「あはは、今のは冗談だよ。ふたりとも本気にしないでよ!」


えっ、『別の科目の勉強しようかな』っていう言葉は冗談だったの?


不愉快そうな顔をしていたから、もしかしたら本当に別の科目の勉強をするかなと思っていた。


冗談だと言われても気持ちを言葉にすることができない私をスルーして、理子ちゃんが蘭子の肩を叩いた。


「もー、鹿目さんってば驚かさないでよ! 本当に嫌なのかと思ったじゃん!」


「ごめんごめん。嫌そうに見えたよね? ふたりとも本気で受け止めないで」


そんなこと言われても。


『本気で受け止めないで』って言われたら、逆に本気で受け止めちゃいそうだよ。


心の中がざわついて落ち着かない。


こういうとき、なんて言えばいいんだろう。
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