影と闇
『きれいで読みやすい字だね。それに、いい名前だね』


落としものに書かれてあった名前を見て、私はそう言ったのだ。


落としものの持ち主が沖田くんだとは知らなかったから、普通に笑顔を見せていたんだっけ。


もし落としものの持ち主が沖田くんだと最初から知っていたら、落としものを拾ったとき笑顔を見せていなかっただろう。


そんなことを心の中でつぶやいていると、沖田くんが私の顔を覗いてきた。


「片桐さん。俺、片桐さんが好きなんだ。だから、俺のそばにいてくれないか?」


眉をハの字にしながら、うるうるとした目を向けてくる沖田くん。
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