影と闇
私が、水槽の中を泳ぐ熱帯魚よりきれいなわけがないのに。


そう思いながら「ありがとう」と笑顔で返した。


それから2時間ほど水族館の中を見たあと、レストランで昼ご飯を食べた。


午後になり、レストランを出ると、頬にポツッと水滴がついた。


なにがついたんだと思って水滴を指でぬぐい取り、はっとして顔をあげた。


見あげる空から、小さな雨粒が降ってきた。


どうしよう、傘を持ってきていない。


慌ててレストランの軒下で雨宿りをする。


しかし、沖田くんは雨粒に動揺することなく、黒い傘をさした。


そして、こちらに手を伸ばしてきた。
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