影と闇
沖田くんのその言葉で、末那が動揺を見せた。


足に力が入らなくなった私を殺気に満ちた表情で見おろしていた末那を、沖田くんは駆け寄る前に見ていたようだ。


こうなったらもう、言い逃れはできない。


沖田くんは末那から目をそらし、くるっと私に体を向けた。


「茅乃、大丈夫だった?」


「うん。大丈夫だったけど……」


やわらかな笑みを浮かべる沖田くんの言葉に、迷わずうなずく私。


沖田くんのおかげで私は無傷で済んだけど……。


ゆっくりと視線を沖田くんに向けたとき、私はギョッと目を見開いた。


「お、沖田くん! それ……!」
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