影と闇
なんて優しいんだろう。


自分が負った傷よりも、私のことに目を向けてくれるなんて。


そう思うだけで涙が出てきそう。


視界が涙でにじみそうになったそのとき、あ然としていた末那がナイフを拾いあげ、私に刃を向けてきた。


まだ私を殺すことをあきらめていないのか。


いや、私のほうに意識を集中させている沖田くんの目を盗んで、私を刺す気だろう。


だが、末那の思いどおりにはいかなかった。


末那がナイフを振りおろしたと同時に、末那を追いかけてきた蘭子と理子ちゃんが、末那をおさえつけた。


「離せ、離せ、離せぇ‼︎」


髪を振り乱しながら叫ぶ末那。
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