影と闇
もしかして、私の前に沖田くんが立ったあとに聞こえた『ビリッ』という音は、制服の袖が切り裂かれた音?


平日に着る制服の袖が、私を守ったことによって切り裂かれてしまった。


目から涙があふれ、それを洗面台にこぼした。


「ごめんね、私のせいで……」


「茅乃はなにも悪くないって。ただ、茅乃を守っただけだから」


腕を洗いながら笑顔を見せる沖田くんの顔を見ると、ますます涙が出てくる。


沖田くんは私のせいじゃないと言っているけど、絶対に私のせいだ。


腕にできた傷を痛がるなら、なぜ私を守ろうとしたの?


不思議でたまらない。
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