影と闇
笑ってから、ふと思った。


私と末那が楽しそうに笑い合っている姿を見たら、蘭子はどう思うだろう。


今はそんなこと考えなくてもいいか。


「それで末那。さっき私の肩叩いてたけど、なんか話したいことでもあるの?」


自分の声を自分で聞いた直後、やはり言葉のバトンをつなぐのは相変わらずヘタだなと思った。


ため息をつきたくなるが、ため息をついたら末那にまた謝らせてしまうかもしれないので、なんとか表情をキープする。


背中に変な汗が流れたと同時に、末那が黙ってうなずいた。


妙に頬がピンク色なのは気のせい?


「うん。あのね、茅乃ちゃんにどうしても言っておきたいことがあるんだけど……」


どうしたんだろう。


末那がこんな照れくさそうな表情を見せるなんて。


さすがに鈍感な私でも、いつもと違うとわかる。


末那の表情からして、悪い知らせではないことはたしかだ。


「どうしたの? 頬が赤いけど」


「…………」


私が指摘しても、末那の頬はピンク色のまま。


しかも、モジモジと手をいじりはじめている。
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