影と闇
歩いている間、私は気になっていることを男性に伝えた。


「あの……あなたは誰ですか?」


「俺は末那の兄のマサヤ」


末那のお兄さんか。


末那に兄弟なんていたんだ。


仲よくなったときから、末那はひとりっ子だと思っていたから。


「へぇ、そうなんですか。末那に兄弟がいるって意外ですね」


私がポツリと言ったそのとき、マサヤさんの足がピタッと止まった。


ゆっくりこちらに顔を向けてくる。


マサヤさんの表情があまりにも怖くて、あとずさりしてしまう。


「……え、えっと……」


なんて言えばいいだろう。
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