影と闇
背中に変な汗が流れるのを感じる。


オロオロしていると、足を止めていたマサヤさんが再び歩きはじめた。


「……よく言われるよ、その言葉」


多少いらだちを隠せないような声色に聞こえるのは、気のせいだろうか。


「よく言われるというのは……」


慌てて歩きだし、マサヤさんの背中に言葉をぶつけた。


「俺が末那の兄貴だって言うと、会うやつ全員が『末那に兄弟がいるなんて思わなかった』って言うんだよ」


「…………」


「どういう意味だろうな、その言葉。そう言われただけで俺、悲しくなるんだよな」


マサヤさんの声が若干震えている。
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