影と闇
泣いているらしい。


もしかして、『末那に兄弟がいるなんて思わなかった』と言われたとき、マサヤさんは心のどこかで傷ついていたのかな。


だったら、早く謝っておかないと。


「……ごめんなさい、マサヤさん」


私が謝ると、マサヤさんはまた立ち止まり、目を見開いた。


「なんであんたが謝るんだよ」


「私も『末那に兄弟がいるとは思わなかった』って言ったので……」


「……あんた、優しいんだな」


「えっ……?」


突然『優しい』と言いだすマサヤさん。


その顔が、やわらかな笑みを作っている。


なぜそんな顔を見せる必要があるのだろうか。
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