影と闇
この発言を聞いて驚かないほうがすごいと思う。


「恥ずかしいって言ったのに、茅乃ちゃんってばすぐに大声出しちゃうんだから……」


「あはは、ごめん。だってびっくりしたんだもん。まさか末那の口からそんな言葉が出るとは思わなかったから……」


顔色を戻して両頬を風船のように膨らませる末那が可愛い。


拗ねている様子は、まるで年下の子供の幼い表情を連想させる。


末那の顔立ちに幼さが残っているせいもあるかもしれないけど。


「むぅ、私だって好きな人はできるんだよ。恋愛したい年ごろだもん」


それはたしかにそうだ。


無表情でクールな雰囲気の人でも恋はするものだと、よく読む本に書かれていた。


だから末那も例外ではないんだね。


でもやっぱり驚きがどうしても優先してしまう。


「私ももうすぐ17歳だよ? 彼氏のひとりやふたりぐらいほしいよ!」


こんなに積極的な末那は見たことがない。


ひかえめで、なにに対しても消極的な末那を見慣れているから、驚いて当然だ。


新鮮な感じがして、わくわくしているのも事実。


「末那、変なもの食べたの? それとも風邪ひいたとか熱があるとか?」
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