影と闇
「……まぁこれだけ言っとけば、あんたが末那に傷つかれずに済むかもしれないな」


そうか。


ペラペラと末那のことをしゃべっていたのは、私が末那にナイフで襲われる以上の傷を負わないようにするためだったのか。


マサヤさん……。


じわりと涙が出てきた直後、近くからサイレンの音が聞こえてきた。


それと同時に赤色灯がきれいに灯る。


あれは消防車だ。


マサヤさんが電話で呼んだ消防車がここに来るんだ。


涙を手の甲でぬぐい、私は末那の家の前に消防車が停まるのを待った。
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