影と闇
べつにふたりが両想いだと決まったわけではないのに、そう考えるとなぜか心が痛んだ。


自分で理由を探してみるが、そう簡単には理由は見つからないみたいだ。


今は、末那の恋を応援することに専念しよう。


そうすればそのうち忘れるだろうし。


「うーん、とりあえず私は自分の恋よりも末那の恋の応援を優先しようかな。だって、末那は唯一無二の存在だもん」


だから私はこう答えた。


末那に恋しなよと言われたからには私も恋しよう、という気にはなれなかった。


これ以上深く詮索しないほうが身のためだと心の中の自分に何度も言い聞かせ、精いっぱいの笑顔を末那に見せた。


そうだよ。


末那の好きな人が誰かなんて聞いていないし、それが沖田くんとは限らないし。


それに私は今、末那や蘭子という友達がいて幸せだから。


その気持ちが数日前と変わってないことに内心驚くが、それを表情には出さなかった。


私が笑顔を向けた、末那は目をうるませて私に抱きついた。


「ありがとう、茅乃ちゃん! 私、できるだけ自分で頑張るから、陰でサポートして? 絶対に彼氏ゲットしてみせるよ!」


「うん、頑張って。もし末那が恋で困ってることがあったら相談にのるよ」


抱きつく末那の頭を優しく撫でて、やわらかな笑みを浮かべた。


末那の恋が実るには時間がかかるかもしれないけど、それはいつか実る。


そう思いながら昼休みを過ごしていた。
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