影と闇

親友との別れ


ベッドのシーツからナイフを取りだした末那は、ゆっくりとベッドから降り、こちらに歩み寄ってきた。


「や……来ないで!」


思いっきり叫ぶ私だが、末那は足と止めようとしない。


ペタペタという末那の足音が近くなる。


どうしよう。


今度こそ、末那に殺される。


末那の病室まで来て、末那の心の闇を聞いたところで帰ろうと思っていたのに……。


「茅乃ちゃん……」


焼けただれた唇が、私の名前を発している。


そう思うだけで、悲鳴をあげそうになった。


だが、悲鳴をあげられない。


ここは病院だから、騒がしくしてはいけない。
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