影と闇
引っ張られた瞬間、腕にピリピリと電気のような痛みが走り、片目をつぶった。


「離さないよ、茅乃ちゃん……」


地の底に響くような低い声でつぶやく末那。


まるで地獄に連れていくかのような感じがして、顔が小刻みに痙攣する。


「や、やめて……」


なんとか離そうと力を入れるが、末那にはまったく効果がない。


どうしよう……。


顔が青ざめていくのを感じながらそう思っていると、沖田くんが末那を引きはがしにかかった。


「芦谷さん、茅乃から離れて!」


病室内に沖田くんの声が響き、壁一枚隔てた向こう側の病室が静かになった。
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