影と闇
私が目を向けても、末那はこちらに顔を向けようとしない。


いったいなにが……。


と、そのとき、末那が口を開いた。


「ねぇ、沖田くん」


「……な、なに?」


「私、沖田くんが好きなの。茅乃ちゃんと付き合ってるって知ってても、あきらめられないの」


「え……」


「一回だけでいいから、私のことが好きだって言ってよ。そしたら私もあきらめるからさ」


三日月のように口角を上げながらそう言う末那を見て、沖田くんが青ざめている。


まさか末那が自分のことを好きでいたとは知らなかったからか、全身包帯だらけの末那に好きだと言われたからか。
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