影と闇
心の中で沖田くんに感謝の気持ちを伝え、目から涙をこぼす。


涙の雫が床にポタッと落ちたと同時に、末那が口を開いた。


「嘘……でしょ? 沖田くんが本気で茅乃ちゃんを好きだなんて……」


「嘘なんて言わないよ。俺にとって茅乃は、心の底から好きだと思えた、大切な存在だから」


「……っ」


真剣な表情をして、堂々とものを言う沖田くん。


それに対し、末那は悔しそうに下唇を思いっきり噛みしめている。


末那は、沖田くんの言うことをちゃんと信じただろうか。


目を伏せて、ナイフを握る手の力が強くなっている末那。
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