影と闇
じわっと涙が出てきたそのとき、末那がナイフを下げて、私に向かって振りおろした。


私に向かってくるナイフが、まるでスローモーションのようにゆっくり動いている。


まだ死にたくない。


でも、もう逃げられない。


私、今度こそ末那に殺されるのかも……。


刃先がキラッと光るのを見た直後、私の体はうしろに引っ張られた。


それと同時に、体があたたかいものに包まれる感覚に襲われた。


おそるおそるうしろのほうを見ると、沖田くんが私を抱きしめながら末那を睨んでいた。


「芦谷さん。茅乃は、心の底から好きだと思える大切な存在だって言ったよね? それなのに茅乃を殺そうとするの?」
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