影と闇
まず今がドラマではないという以前に、末那が私を裏切るようなまねは絶対しないはずだ。


私が見る限り、末那は見た目どおり優しくて天使のような存在だ。


だからといって、蘭子が悪魔のような存在というわけではない。


蘭子も私の友人のひとりだと思っているけど、天使の雰囲気がある末那を邪魔者扱いするから、どうしても“一番の友人”とは言えないのだ。


なにも言わずに黙り込む私を視界に映したのか、蘭子が驚きの声をあげた。


「茅乃? どうしたの、すごい怖い顔してるけど」


その声が聞こえたと同時にはっと我に返った。


「あっ、なんでもないよ。ちょっと考えごとをしてただけ」


「ふーん。私はてっきり芦谷のこと考えてるのかと思ったけど茅乃がそう言うなら、まぁいっか」


蘭子の言葉に一瞬ドキッとした。


さっきまで末那のことを本当に考えていて、バレたのかとヒヤヒヤしたから。


ほっとひと安心した直後、先生が持っていたチョークを置いてこちらを向いた。


「それじゃあ、自分が該当するグループの席に座ってくれ」


クラスメイトが一斉に動きはじめる。


教室内がなだれのようになって目を見開いたが、蘭子に腕を引っ張られてなんとか移動することができた。
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