影と闇
「こいつ、なんか言われただけで泣いてやんの〜」


「こいつの泣き顔なんてレアじゃない?」


「泣いて済むと思うなよ」


「泣いたら誰かが助けてくれるって思ってたら大間違いだからね」


本当におかしく思っているのか、蘭子たちは笑いながら末那に冷たい視線を向ける。


他のクラスメイトはなにか言いたそうな顔をしているが、蘭子たちに睨まれるのが怖いせいで見て見ぬフリを決め込んでいる。


最悪な事態が起こってしまった。


末那と蘭子はお世辞にも仲がいいとは言えないから、こんなことになっても不思議じゃないけど。


慌てて末那と蘭子の間に割って入ろうとするが、伸ばした手を蘭子に掴まれてしまう。


「蘭子……?」


なにするつもり?


そんな気持ちで目を向けると、蘭子は満面の笑みを私に見せて、末那を正面から睨みつけた。


「茅乃、ごめ〜ん。私、茅乃に話があるんだわぁ」


他のクラスメイトを尻目に、蘭子がニコッと微笑んだ。


蘭子に手を引っ張られて小走りになった直後、うしろから末那の声が響いた。
< 5 / 376 >

この作品をシェア

pagetop