影と闇
「本当におもしろい人は、自分のことをおもしろいとは思わないよ。おもしろいかどうかは自分が決めるんじゃなくて、他人が決めるの」


「そう、鹿目さんの言うとおりだよ。『私はおもしろくない』と思ってる人ほどおもしろいの。だから茅乃はおもしろいの!」


ふたりがなぜ“おもしろい”の定義を語ってるのかわからないけど、ふたりから見た私がおもしろく見えるということはわかった。


肩をバシバシ叩いているうえに声のボリュームまで上がっているので、案の定先生が眉をひそめて目つきを鋭くさせた。


「こら、お前たち。とくに鹿目と阪口、今はあくまでも授業中だぞ。もうちょっと静かに話さんか」


こちらを睨むようなな視線に耐えられなくなったのか、あきらめたように蘭子が私の肩から手を離す。


それと同時に理子ちゃんの手も肩から離れていったので、少しだけさみしさを感じてしまう。


さみしさを感じている私をスルーして、蘭子がグループのメンバーに明るい口調で話しかけた。


「ごめんね、修学旅行の計画の話に戻そ! 誰か、行き先の近くでどうしても行きたいとこってある?」


すごいな、蘭子は。


切りかえが早くて羨ましい。


私は切りかえをするのがすごく遅くて、小さなことでもずっと引きずったままで行動することが多い。
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