影と闇
しかも、今からそこに来てくれないかと誘われた。


青い橋の近くにある服屋か。


家から歩いて15分だから歩いていけるけど、なんか不安だ。


その服屋は女子中高生に大人気の雑誌に載っているアイテムばかりを売っている、いわば“町内一のファッション専門店”なのだ。


そんなところに私が身を投じるなんてことは、自殺行為とほぼ同じようなものだ。


お店に入った瞬間の気まずい空気を味わったことが何度もあるから、そう思ってしまう。


私は本当に地味で、華やかさなんてまったくないもん。


心の中で抱いている気持ちが出たのか、大きいため息を漏らしてしまった。


それが運悪く末那の耳に響いたようだ。


『茅乃ちゃん、べつに無理して来なくてもいいよ? 私があの服屋に用事があるっていうだけだから』


優しく包み込むような末那のその声が、私には天使に思えた。


ちょっと大袈裟かもしれないけど、それぐらい私には度胸がないのだ。
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