影と闇
グイッと引っ張られたせいで、バランスを崩しそうになった。


蘭子たちにバレないようにうしろに視線を向けると、末那がうるうるとした瞳を私に見せた。


私と末那が視線を合わせたと同時に、末那が口パクでなにか言った。


『鹿目さんが怖いから、あとで話の続き聞いて!』


たぶんこう言ったのだろう。


目がうるんでいるのは、蘭子たちに責められて泣きたいのを我慢しているからだろう。


そんな末那の姿が豆粒のように小さくなったと思ったときには、蘭子に引きずられていた。


廊下を歩いている生徒はなにごとかと言わんばかりに目を見開いて、呆然としている。


そんなことなどおかまいなしに、蘭子はスピードを速めて歩いていく。


蘭子、歩くの速すぎ。


私はそんなに走ることが得意ではないから、体勢を直して小走りで蘭子のペースについていくだけで精いっぱい。


ガラガラッ!


教室から出て数分後、やっとで蘭子の足がピタッと止まった。


どこだと思って視線を上に向けると、そこには“第2化学室”というプレートが映っていた。
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