影と闇
☆☆☆
帰り道。
橋を渡ってすぐ近くの信号が青になるのを待っていると、誰かに声をかけられた。
「あっ、茅乃。茅乃じゃない?」
えっ?
その声に聞き覚えがあるものの、それが誰のものかわからなくて、くるっと体を向けると、思わず「あっ」と声を漏らした。
そこにいたのは中学時代の友人だった。
「ひさしぶり〜、元気だった?」
手を大きく振りながら笑顔で駆け寄ってくる彼女に、末那が小首をかしげた。
末那とは高校に入ってから知り合ったから、面識がなくて当たり前だ。
中学時代の友人を見て疑問の目を向ける末那を軽くスルーして、ぎこちない笑顔で彼女に話しかける。
「まぁ、うん。元気っていえば元気かな」
「あはは、茅乃ってばいつもそんなこと言ってたもんね。それもなつかしいな」
彼女の言葉に、勝手に傷ついてる自分がいた。
彼女は、私がなにも変わってないと言いたかったのだろう。
全然変わってないなら『中学からまったく変わってないよね』って素直に言えばいいのに、と思うが、あとでめんどくさいことになりそうなので言わないでおく。
「なつかしいよね。そういうミカも変わってないよね」
「そう? 少なくとも私、ちょっと変わったと思ってるんだけどな〜」
たしかにそれは言えてる。