影と闇
やがて視界から末那のうしろ姿が見えなくなると、私と一緒にこの様子を見ていたらしいミカに声をかけられる。


「ねぇ茅乃。今走っていった子、誰?」


ミカは末那のことが気になっていたようだ。


「あぁ、末那か。末那は高校入ってからできた友達だよ。今じゃ学校で一番の親友なんだ」


笑顔でそう言った途端、ミカの顔色がさっと変わった。


私、なんかマズいこと言っちゃった?


「ど、どうしたの?」


「茅乃、マジであの子と仲いいの?」


「えっ、うん」


彼女の問いかけに迷うことなく答えた直後、いきなり両肩をガシッと強く掴まれた。


正直痛いけど、我慢するしかない。


女子高生の平均握力をはるかにうわまわるほどの力とは対照的に、真っ青な顔を見せるミカ。


「あの子と友達やめたほうがいいよ。噂で聞いたけど、あの末那って子、すごく性格悪くて、それで昔いじめられたことがあるんだって。だからあの子の言葉を簡単に受け入れたらダメだよ!」


ミカのそんな言葉が耳に響いた瞬間、私の時間が止まった気がした。


末那が性格悪い?


その言葉が頭の中で大きく、何度も再生される。
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