影と闇
私の耳に異常がないなら、ミカはこう言っていた。


『あの末那って子、すごく性格悪くて、それで昔いじめられたことがあるんだって』


それは私が一番聞きたくなかった言葉。


ちゃんと聞こえていなかったとしても、同じ反応をしていたかもしれない。


末那が性格悪いなんて、信じたくない。


ありえないよ。


あんなに可愛くて優しい末那が性格悪いなんてありえない。


「そんなの嘘に決まってるでしょ。またまたミカってば冗談がうまいんだから〜」


「いや、本当だって! あの子と同じ中学に通ってた子があの子に『性格ブスだ』って言われたっていう情報も手に入れてるし!」


末那の言葉を簡単に受け入れるどころか、むしろミカの言葉を受け入れられずにいる。


なんとか明るい空気を取り戻そうと必死に笑ってみせるが、ミカはいたって真剣に答えた。


嘘でしょ。


本当に末那は性格が悪いの?


嘘だって言ってよ。


「ミカ……本当に末那のことを言ってるの? 違う子のことじゃないの?」


そう、ミカは違う“まな”っていう子と勘違いしているんだよ。


ミカがその子と末那のことを勘違いしていたらいいのに、という期待があったのだ。
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